婚約破棄されたので、好きにすることにした。

 魔導師でもある彼は、同じ移民であるクロエを気に掛けている。
 それだけなら良い人だと思えるが、とにかく人の話を聞かず、クロエが嫌がっていることにも気が付かずに、善意を押し付ける。
 さらにその善意も、移民すべてに向けられるものではなく、自分の気に入った相手にだけのようだ。
 他の移民に、この国出身のギルド員よりも厳しいと聞いて、クロエは呆れていた。
 好ましい要素などひとつもない相手だが、なぜかクロエに執着して、その相棒であるエーリヒを敵視している。
 エーリヒを、いきなり魔法で攻撃してきたこともあった。
 今のクロエにとっては、もう二度と会うこともないだろう元婚約者よりも、嫌いな相手だ。
「クロエは何も心配しないで、ここにいればいい。対応は俺に任せて」
「でも……」
 ギルド員という立場を利用して、エーリヒに無理難題を押し付けるのではないかと心配になった。
「ロジェも心配してくれているみたいだし、明日は一緒に行くわ。違約金の話は、直接聞きたいから」
「……そうか」
 心配そうな顔をしていたが、エーリヒは、クロエが決めたことには反対しない。