婚約破棄されたので、好きにすることにした。

「冒険者になりたかったのに、いいのか?」
「うん。もういいの。この国では、冒険者ギルドでさえ、自由ではないと気が付いたから」
 クロエは、迷いなく頷いた。
 前世の記憶から、冒険者というのは自由なイメージがあったけれど、この国ではそんな自由は得られない。
 それどころか、今のままでは危険の方が大きいだろう。
「わかった。それがクロエの望みなら。だが、依頼を受けてしまった分はどうする?」
「そうね……」
 クロエは視線を動かして、部屋の片隅に置かれている魔石を見つめた。
 今日、新しい依頼を受けたばかりだ。
「それは、最後に頑張って作ったことにして……。ううん、違約金を支払って断ったほうがいいかもしれない」
 それも、今すぐに違約金を支払って断るよりも、少しずつ納品し、納期に間に合わなくなってから仕方なく支払う方が、信憑性が増すのではないか。
 そう言うと、エーリヒも同意してくれた。
「わかった。少しずつ納品しながら、クロエの体調が悪くて、もしかしたら間に合わないかもしれないと言っておくことにする」
 今まで魔石を売った分で蓄えはできているし、最初に宝石を売ったお金もまだある。