婚約破棄されたので、好きにすることにした。

 あの養女の話も、きっぱりと断らなくてはならない。
(面会も、どうにしかしないと……)
 会うことさえできれば、何とかなる。
 彼女はそう言っていた。
 だから、面会も拒むつもりだ。
 貴族からの申し出を、移民であるクロエが断るのは容易ではないだろうが、たとえギルドを除籍になったとしても、それだけは避けなくてはならない。
(まさかこんなことになるなんて)
 予想外の事態が続いている。
 冒険者になれば自由になれると思っていた。
 だが実際は、貴族社会とそう変わらない。
 移民は差別され、かつて差別されていた人間も、逆の立場になれば簡単に人を見下す。
 あのギルド員のサージェだけではない。
 他の魔法ギルドの女性も、クロエが魔導師だと知る前は見下していたのだから。
(この国の在り方が変えなくては、どんな立場になっても何も変わらないのかもしれない……)
 スラムの教会で子ども達を見たときも、そう思った。
 けれどあのときと違い、今度は貴族の女性が関わっている。
 しかも彼女は、エーリヒの素性を詳しく知っているようだ。
 深く踏み込むには、危険すぎる。
「クロエ」