婚約破棄されたので、好きにすることにした。

 クロエのアイテムボックスには、子どもたちに渡そうと思って作ったクッキーと、衣料品や保存食などが入っている。
 あの教会で保護されている子どもたちに罪はないと思うが、あんな話を聞いてしまえば、もうスラムを訪れようとは思えなかった。
「たしか、クロエのアイテムボックスに入っているものは、劣化しないんだよな?」
「え? うん、そうよ」
 ふいにエーリヒにそう聞かれて、こくりと頷く。
 クロエは魔女で、願ったことを叶える力を持つ。
 だから、ゲームのようなアイテムボックスが欲しいと願ったことで、それが手に入った。アイテムボックスに入っているものは劣化せず、何年経ってもそのままの状態を保っている。
「だったら、いつかあの子どもたちに渡せる日が来る。だから大丈夫だ」
 エーリヒは昨日、クロエが子どもたちに食べてほしくて、何種類もクッキーを作っていたことを知っている。
 だから、そう言って慰めてくれたのだろう。
「……そうね」
 だから笑顔でそう答えた。
 けれど自分だけならまだしも、あの女性がエーリヒも狙っていると知ったからには、迂闊に近寄るつもりはなかった。