婚約破棄されたので、好きにすることにした。

 その子ども達の笑顔に、ついクロエの頬も緩む。
 さっそく教会に向かおうとしたが、エーリヒに止められた。
「エーリヒ?」
「クロエ、隠れて。先客がいるようだ」
「え?」
 先客がいても、別にかまわないのではないか。
 そう言おうとしたクロエは、エーリヒが指す先にいた人物を見て、咄嗟に建物の影に身を隠した。
 後ろを向いているので顔まではっきりとわからないが、複数の護衛を連れた若い女性のようだ。
 輝くばかりの金色の髪といい、白い肌といい、間違いなく貴族の令嬢だろう。彼女は元冒険者だったという男と、親しげに話をしていた。
「ありがとう。あなたの情報のお陰で、彼女を見つけることができたわ」
 顔は見えないが、声ははっきりと聞こえる。
 美しく、透き通るような声だ。
「いえ、お役に立てて何よりです。お探しの魔石を作れる移民の女性が、予定通りに依頼を受けてここに来てくれて幸運でした」
(え……)
 魔石を作れる移民の女性。
 それが間違いなく自分のことだとわかって、クロエはびくりと身体を震わせた。
 ふたりは、そのクロエがここにいることも知らずに会話を続けている。