婚約破棄されたので、好きにすることにした。

 たとえクロエが望まなくとも、今の身分が移民である以上、断ることは難しいかもしれない。
 そう思ったが、一応そう尋ねてみる。
 だがロジェも、クロエがそれを望まないとわかっていたようだ。
「先方はかなり理解のある御方で、無理強いはしないが、それでも一度、話は聞きたいとおっしゃっていてね」
「……そうですか」
 少しだけ、その返答に驚く。
 この国の貴族にしては本当に珍しく、こちらの意志を尊重してくれるらしい。
 それでも、面談は避けられないようだ。
 その貴族がどれほどの爵位なのかわからないが、姿を変えたクロエはわからなくとも、エーリヒを知っている可能性は高い。
(もし王女をよく知る人なら、エーリヒが王女のお気に入りの騎士だと気が付くかもしれない)
 クロエの予想では、王女はまだエーリヒに執着している。もしその貴族にエーリヒの居場所を告げられてしまったら、大変なことになる。
「もし面談をするのなら、私ひとりで行きま……」
「クロエ?」
 エーリヒは驚いた様子で、クロエの言葉を遮る。
「何を言う。ひとりで行かせることはできない」
「でも……」