婚約破棄されたので、好きにすることにした。

 でもギルドからの話を聞かないわけにはいかないし、エーリヒも一緒でいいと言ってくれたので、ここは素直に従うことにした。
 クロエが同意したので、ロジェは受付の奥にある個室にふたりを案内してくれた。
 狭い室内に、簡素なテーブルと椅子がある。
 ここはあまり内容を公にできない依頼などを聞く部屋で、以前緊急依頼を受けたときに説明を受けた場所でもあった。
 クロエはどんな話だろうと緊張しながら、エーリヒと一緒に、ロジェの向かい側に座る。
 するとロジェは、さっそく話を始めた。
「実は、あんたにとある貴族から、養女にしたいという申し出があった。魔力はあまり強くないが質の良い魔石が作れると、最近は評判になっていたからね」
「えっ……」
 思ってもみなかった話に、クロエは困惑する。
 普通の移民だったら、国籍取得どころか貴族になれるのだから、喜ぶところだろう。
 だが、クロエはもともと侯爵令嬢である。
 元婚約者と父から逃げるために身分を捨てたのに、また貴族の養女になんてなりたいとは思わない。
「お断りすることは、可能ですか?」
 それでも、この国の貴族が絶対的な権力を持っているのはたしかだ。