婚約破棄されたので、好きにすることにした。

「明日、魔石の納品に行くわ」
「そうか。もしかしたらその時に、ロジェが国籍取得の話をするかもしれない」
「うん。エーリヒも行く?」
「もうすぐ移民のクロエは、正式にアダナーニ王国の国民になれるだろう。
 エーリヒはもう少し時間が掛かるかもしれないが、あれほど依頼を受けてすべて達成しているのだ。
 焦らずとも、じきに許可は下りるだろう。
 そうすれば、ふたりで新しい人生をやり直すことができる。
 クロエはそう信じていた。
 
 「魔石の納品です」
 クロエは受付に声を掛けて、肩掛け鞄の中から魔石を取り出した。
 この中はアイテムボックスになっていて、魔石どころか何でも入るが、他から見れば普通の鞄でしかない。
「ああ、ご苦労さん」
 受付にいたのはゲームのように可愛い受付嬢ではなく、中年の男性のロジェである。彼はクロエもエーリヒも安心して接することができる、貴重な存在だ。
「あいかわらず、綺麗な魔石だね」
 そんなロジェは、クロエが納品した魔石を見て、そう言ってくれた。
「ありがとう」
 お礼を言って、クロエはにこりと笑った。
「また依頼が入っているよ。受けるかい?」