婚約破棄されたので、好きにすることにした。

「よかった。部屋が暗かったから、あまり魔石作りに集中しすぎて倒れてしまったのかと思った」
「ごめんなさい」
 クロエを心配していたのだと知って、謝罪する。
「つい熱中しすぎて。今、明かりをつけようと思っていたの」
「クロエは身体があまり丈夫ではない。無理はするなと、いつも言っているだろう?」
 優しい口調だったが、抱きしめてくれる腕にはいつもより力が込められている。本当に心配をかけてしまったようだ。
「今度から気を付ける。でも、エーリヒも遅かったね。心配で、迎えに行こうと思っていたのよ」
「ああ、そうだね。ごめん。依頼自体はすぐに終わったんだけど、ギルドで時間を取られてしまって」
「ギルドで? まさか、またあの人が?」
 またサージェがエーリヒに絡んだのかと思い、険しい顔をするクロエに、エーリヒはそうではないと首を横に振る。
「違う。サージェではなくてロジェだ」
「ああ、ロジェね」
 エーリヒを呼び止めていたのが、いつも親身になってくれる受付の男性だったと知って、クロエは首を傾げた。
「新しい依頼の斡旋とか?」
「いや。もうすぐクロエは、この国の国籍を取得できるだろうと教えてくれた」