婚約破棄されたので、好きにすることにした。

 この国では、やはりエーリヒのような存在は稀有だと思う。
 そんなことを考えながら黙々と魔石作りに熱中していたら、いつの間にか手元が見えにくくなってきた。
「あれ?」
 視線を上げてみると、窓の外はもう薄暗くなっている。
「もうこんな時間?」
 慌ててランプを点けようと思って、立ち上がった。
 この国には魔導師が少なく魔石も高価なので、一般市民は蝋燭を使ったランプを使用していることが多い。
 けれどこの家では、日頃から魔石を使うランプを使用している。クロエが魔石を作れるので、その辺は問題ない。
 魔石を使ってランプを点けようとして、ふと不安になる。
 エーリヒはまだ戻らないのだろうか。
 早めに終わらせてくると言っていたのに、日が暮れるまで戻らないのはさすがに心配だった。
(どうしよう……。迎えに行ってみようかな?)
 魔石を箱にしまい、立ち上がった途端に、エーリヒが家に駆け込んできた気配がした。
「クロエ?」
「エーリヒ、どうしたの?」
 部屋に飛び込んできたエーリヒは、クロエの姿を見てほっとしたように表情を緩めた。そのまま腕の中に抱きしめられる。