婚約破棄されたので、好きにすることにした。

 それによると、彼は教会に住んでいるが神父ではなく、もともとは冒険者だったようだ。
 移民だというだけで、同じ仕事をしてもまともな報酬が貰えず、そのせいで生活に困ってスラムに住むようになったらしい。
 そこで劣悪な環境で暮らす子ども達のことが気になって、廃屋になっていた教会を修繕し、そこに子ども達を集めて面倒を見ていた。
 もともと腕の立つ男だったので、子どもを狙った犯罪から守ることもできているようだ。
「俺がここを離れると、子ども達が危険なもんでね。だが、治療薬をわざわざスラムにまで届けに来てくれる奴なんかいないと思っていた。報酬もほんの僅かだったのに悪かったな」
「緊急依頼だったから、報酬目当てではない。気にするな」
 エーリヒの答えに、男は意外そうな顔をした。
「へえ、緊急依頼にしてもらえたのか。ギルドの人間は、スラムの人間なんていくら死んでも、まったく気にしないと思っていたよ」
 そう言う男の顔には、嫌悪が滲んでいる。スラムに流れ着いた経緯を考えると、それも無理はないのかもしれない。
 クロエも初めて魔法ギルドに足を踏み入れたとき、蔑むような目で見られたことを思い出す。