婚約破棄されたので、好きにすることにした。

 そんな中、エーリヒは目立つ容貌を隠そうともせず、堂々と歩いていた。
 治療薬を奪って売り捌こうとしていた者達も、生きるために略奪行為をしている。適わない相手には、最初から立ち向かおうとしないのだろう。
 銀髪の元騎士は、優美な外見に似合わずなかなか腕が立つと、噂になっているようだ。
 だから危険な目に合うこともなく、無事に目的地に到着することができた。
(でも……)
 スラムで生きる人たちの姿は、クロエの心に暗い影を落とした。
 エーリヒに守られて辿り着いた教会は、廃屋のような朽ちた建物だった。
 けれど修繕の跡が至る所に見受けられ、洗濯物が干してあったりして、生活感がある。
 治療薬を持って訪ねると、中から大柄の男が顔を出した。
「ああ、薬を届けてくれたのか。ありがたい」
 男はそう言って、薬を受け取り、受領のサインをしてくれた。
 これで依頼は完了である。
 思っていたよりも簡単に依頼を果たすことができて、ほっとする。
 この教会で子ども達の面倒を見ているという男は、黒髪に褐色の肌をしているので、移民なのだろう。
 事前にエーリヒがある程度、依頼主について調べてくれていた。