婚約破棄されたので、好きにすることにした。

 エーリヒが治療薬を持ち、ローブのフードで顔を隠したクロエが、その後に続く。
 スラムは城門の近くにあるらしい。
 フードで顔を隠しているのは、城門を守っている騎士達に見られないように、用心してのことだ。
 今まで、なるべく父の配下である騎士団がいる場所には近寄らないようにしていた。だから、クロエが城門に近付いたのはこれが初めてである。
(ここが……)
 王都を囲う城壁の高さは知っていたが、城門も大きかった。
 人の出入りを厳しく制限しているのは、こんな遠くからでも見て取れる。威圧的に振舞う騎士の姿には、父を思い出して不快になった。
(それで、こっちがスラムね)
 王都の真ん中を通る街道の西側にある住宅街と、城門近くにあるスラムの間には、大きな用水路がある。その上に掛けられていた橋を渡ると、城壁に沿ってスラムがあった。
 もともとは移民用の住居だったらしいが、その中でも貧富の差が出てきて、成功した移民は住宅街に移り住んだ。逆に、もともとこの国の住民だったのに、身を持ち崩してスラムに逃げ込んだ者もいる。