婚約破棄されたので、好きにすることにした。

 もし病気になったとしても、依頼を受けてくれた人の分の治療薬は確保してあること。
 ただ、治療薬を奪われてしまった場合は弁償金を支払わなくてはならないことを説明してくれた。
「暗くなる前に向かった方が良いだろう。ただ、騎士団の助力は期待しない方がいい。彼らはスラムに立ち入らない」
「ええ、わかったわ」
 やはり騎士団は役に立たない。
 そう思ったが、エーリヒが元騎士であることを思い出して、それを口にすることはなかった。
(悪いのは騎士を使う立場の人間。つまり、クロエの父よね)
 前世の記憶を思い出してから、自分の父だという感情はまったくない。
 今のクロエにとって父は、自分を不当に虐げていた敵である。
(とにかく今は、治療薬をきちんと届けないと)
 国籍取得も大事だが、依頼を果たすことによって救える命がある。
 エーリヒのことが少し心配だが、深窓の令嬢だったクロエと違って、それなりに鍛えているようだ。治療薬も確保してあると聞いて、依頼を受けると決めた。
 明るいうちに向かった方がいいと言うギルド員のアドバイスもあり、さっそく納品に向かうことにした。