婚約破棄されたので、好きにすることにした。

「治安が悪い上に、疫病の薬は王都全体に流行ることを恐れた富豪層に高値で売れるからね。略奪して売り捌こうと、待ち構えている者もいる。スラムに入れば、当然疫病にかかってしまう可能性もある。だから、緊急依頼になったそうだ」
 すっかり顔馴染みになった中年のギルド員が、そう説明してくれた。
 本来なら騎士団の領分だと思うが、この国の騎士団は貴族で構成されているので、スラムに立ち入るようなことはない。
 そういった仕事は、すべて冒険者にやらせているらしい。
(これは、受けるべきでは?)
 深刻そうなギルド員の顔を見ながら、クロエは考える。
 何せクロエは自らの魔法によって、どんな病気にもかからない身なのだ。スラムで流行っている病気がどんなものであろうと、心配はいらないだろう。
 緊急依頼を果たしたとなれば、評価も上がる。依頼はパーティーで受けて、クロエひとりで納品に向かえば問題はないだろう。
「ねえ、エーリヒ。これ受けてみようと思うんだけど」
 そう相談してみると、彼は少し複雑そうな顔をする。
「スラムか。あまりクロエには近寄ってほしくないが」