婚約破棄されたので、好きにすることにした。

 でもエーリヒがそう言ってくれるなら、それは真実だと信じられる。
 今の自分はクロエだと、胸を張って言うことができた。
「うん」
 涙を浮かべて頷いたクロエを、エーリヒは腕の中に抱き寄せた。
「ふたり分ってことは、今のクロエも俺を愛してくれていると思ってもいい?」
 真剣な顔でそう尋ねられて、頷いた。
「もちろんよ。むしろ昔のクロエは憧れの気持ちの方が強かったから、私の方があなたを愛しているわ」
 昔の自分に負けるわけにはいかないと、きっぱりとそう告げる。
「俺も、昔は恩人のお嬢様って思いが強かったが、今は俺のクロエだと思っているよ」
 エーリヒもそう言ってくれた。
 すべてを打ち明けて、もう隠し事は何もない。
 まだ昔の自分の記憶は鮮やかに残っているけれど、この世界でクロエとして、エーリヒと生きていく。
 そう決意した日だった。

 それからは積極的にギルドで依頼を受けて、それを堅実に果たす日々を過ごしていた。
 魔石も何度か納品したが、予想以上の高値で買い取ってくれた。