私と新は、家が近所の幼なじみ。


生まれたときから私たちは、いつも一緒だった。


ずっとただの幼なじみだった新が私の中で変わったのは、幼稚園の頃。


人見知りでおとなしい私は、同じクラスのいじめっ子・タカシくんから意地悪されることが多かった。


「お前、またその変なウサギ持ってんの?」


亡くなったおばあちゃんが作ってくれ、私がいつも肌身離さず持っていたウサギのぬいぐるみを、タカシくんに取られてしまった。


「ねぇ、タカシくん。返してよ」

「いやだね。返して欲しけりゃ、取り返してみろよ」


タカシくんが私の手の届かない高いところまで、ぬいぐるみを持ちあげる。


タカシくんよりも背の低い私は、どれだけ頑張ってもぬいぐるみに手が届くことはなく、タカシくんに笑われるだけ。


私が、どうしようもなく泣いていたそのとき。


「タカシ、返してやれよ。それ、彩里の大事なもんだから」


新が、タカシくんからぬいぐるみを取り返してくれた。


「泣かないで、彩里。彩里のことは、俺が守るから」


そう言って、新が私の目元の涙を拭ってくれ、ニコッと優しく微笑んでくれたとき。


初めて胸が、ドキッと高鳴るのを感じた。