「……あ、電気、」
その後しばらくして復旧した明かりに、わたしもほっと息を吹き返す。
ふとカーテンを開けてみると、流れる雲の隙間から一つ、二つとまばらな星が見えた。
ちょうど雲に隠れているのか月の姿は見えない。
月はたった一つしかないから無くなると大変だ。
替えも利かないし、夜が闇に呑まれてしまう。
でも、星はたくさんあるからいくらでも替えは利く。
なくたって困らない。
……いなくなったって、誰も。
──東雲さんが月なら、わたしは星なのかもしれない。
「外、なんか見えんの」
振り返ると、ちょうど東雲さんが部屋に入ってくるところだった。



