ハイドアンドシーク



どうやらお茶に付いていたおまけらしい。

掲げると、やたらハイテンションな毛玉が目の前でゆらゆら揺れる。



「これ犬?ポメラニアン?」


よくわからないけど、かわいい。

わたしはそれをスマホにつけることにした。



「わたしが死にそうになったときには身代わりになってくださいね」

「いきなり荷重にすんなよ」

「だってこの毛玉なんか強そ──……わっ」


世界が裂けるような雷鳴が轟いたあと。

一瞬だけ部屋の明かりが消えて、すぐに戻った。



「びっくりした……近くに落ちたのかな」


さあ、と気の抜けた返事のあとに「雷は怖くねえの」と抑揚の感じられない声色で訊かれる。


「怖くないですけど……」



雷"は"ってどういう意味だろう。

わたしなんか言ったっけ、東雲さんに。



「それより髪、乾かし終わりましたよ」


だからそろそろ退いてほしい。

そういう意味で言ったつもりだった。


相変わらずわたしに全幅の信頼を置いて(真偽はともかく)身を預けていた東雲さんが、緩慢な動きでようやく上半身を起こして、それから──




「どーも」


真っ先に感じたのは。

やっぱり、髪が顔を掠めていく感覚だった。