「でも、そっか。ちょっとわかる気もする、東雲さんの周りに人が集まるのも」
けっして滾るような炎じゃない。
というよりも東雲さんは、松明のような人なんだ。
静かだけど確かな存在感があって、周囲にいる人を引き寄せる。
それでもみんな、火傷することを恐れてあと一歩を踏み込めない。──それは、わたしも同じ。
でも、
「拳を振るわなくても、威張らなくても、人はリーダーになれるんですよ。東雲さんはみんなにとっての──"光"なんです、きっと」
言いながら、なんだか泣きそうになった。
自分との違いに、そして届くことのない存在に。
東雲さんはわたしだけの"光"じゃなかったんだ。
「褒めてもなんも出ねーぞ」
「わかってますよ」
「あ、おい鹿嶋。これやるよ」
「めちゃくちゃ出てるじゃないですか」
笑いながらわたしはドライヤーを止める。
手渡されたのは、小さなストラップだった。



