この状況にもなんだかくすぐったくなってきて、わたしは必死に話題を探す。
「そ、いえば……昨日またブッチたちが喧嘩したらしいですよ、西の人たちと」
巻き込まれる前に退散したから勝敗はわからない。
少なくとも戻ってきたブッチはぴんぴんしていた。
なんでもカポエイラの使い手らしいけど、そもそもカポエイラってなんだろう。
「なんで殴り合いなんてするんだろう。あんなの、痛いだけなのに。……、東雲さんは、」
「もうしてねーよ、喧嘩も何も」
わたしが言いたいことを察したのか、東雲さんが先回りして言った。
その言い方で、ここに来る前までは興じていたんだろうなとこちらも察しがつく。
今はしていないことに一先ずほっとし、この際だからずっと気になっていたことも尋ねることにした。
「じゃあなんで龍虎になってるんですか東雲さん」
「そんなん俺が知りてえわ。新顔くんたび挨拶来させんのまじで勘弁してほしーんだけど」
「あー……わたしも行きましたもんね、挨拶」
もう一生、会えることはないだろうと思っていた。
あのときの衝撃はオメガだとわかったとき以上だったな。



