ハイドアンドシーク



わたしもゆっくり息を吐きだして、隣を見上げる。

頭一個分はある身長差はこれから先、縮まることもないだろう。



「東雲さん、ほんと大きくなったね」

「お前は……なんか縮んだよな」

「わたしだってこれでも身長伸びたんですよ」



小さい頃は、いつもわたしが前にいた。

ここに来てからは、いつも東雲さんを前にしていた。


前からでも後ろからでも見えないものはある。

それも、教えてくれたのは東雲さんだった。


雨がどうこう、いまだに聞こえてくる女の子たちの声はもう気にならなかった。


──そういえば、



「東雲さんは、…婚約者とか、いないよね?」

「いるわけねーだろ」

「…ですよね」


わかりきったことだけど、それでもほっとする。

わたしはまだ、この人と一緒にいてもいいんだ。


歩調を合わせてくれている東雲さんの隣でふと空を見上げる。

うっすらと透ける月が、たしかにそこに存在していた。