「んなことより」
「え?、わ……っ」
前を歩いていた東雲さんがわたしの腕を引いた。
たたらを踏んだわたしは、東雲さんの隣に並ぶ形になって。
「歩くときいっつも後ろにいんの何?」
そういうつもりはなかったけど。
言われてみれば、いつも東雲さんの一歩後ろにいた気もする。
オメガだとわかってから、誰といるときもわたしは、無意識に輪から一歩引いていた。
「話しにくいんだよ後ろ立たれると」
「でも、わたし、……オメガだし」
東雲さんが足を止める。
かすかに眉宇をひそめた彼と、目が合った。
「それ結局、あいつらと言ってること同じだけど」
「あ……」
言われてようやく、はっとする。
東雲さんの言う通りだ。
わたしの表情が変わったのを見て、やっとわかったかと言わんばかりに東雲さんは息を吐いた。
「そうやって自分のこと卑下すんのやめな。カンケーねぇから。じゃあお前、俺がオメガだったら隣並ばれたくねーわけ?」
そんなわけない。
ぶんぶんと首を横に振る。
「自分で自分の価値下げるような真似すんなよ」
「……うん」
オメガは下だと思い込んでいた自分が恥ずかしくなった。
壁をつくっていたのも、オメガを差別していたのも、自分自身だったのだ。
東雲さんはそれを教えてくれた。



