ハイドアンドシーク



ずっとこんな調子だし、東雲さんがファンサをしないって決めたのならわたしはそれでいいと思う。

むしろそうして欲しい。


だから、いつもは立ち止まることなく素通りするんだけど、この日はすこし違った。



「それにしても、なぜ統理さまはベータなのかしら」


だれかの言葉を皮切りに、口々にお嬢様たちは思っていたことを吐露しはじめた。



「宝の持ち腐れですわよね。アルファにも見劣りしない美貌も才能もお持ちなのに」

「本当に勿体ないですわ。アルファならわたくしの未来のお婿さまでしたのに。ベータだなんて」

「あらあなた婚約者がいらっしゃるでしょう」

「ええ、でもベータの統理さまにも劣るようなアルファなんですのよ。恥ずかしいったらありゃしない」



足が、





「鹿嶋。──れん」


東雲さんに呼び止められて、初めて。

わたしは、自分の足が彼女たちの元へ向かっていたことに気づいた。