それは男と女とはまた別の、第2の性。
アルファにベータ、オメガ。
わたしたちは必ず、この3種類のうちのどれかに分類されている。
人によっては男女を「性別」、アルファなどを「属性」って呼ぶけれど。
ベータだと診断される人がほとんどだからか、呼び方なんてみんなあまり気にしてなかった。
こんなの、あってないようなものだ、と。
性別は生まれたときに外見で判断できるけど、第2の性は外見じゃ判断できない。
検査をして、そこで初めて判明する。
小学校で行われた一斉検査。
そこでわたしは自分の第2の性を知った。
「とーりくんにだけ教えてあげる」と、今にも増してプライバシーもへったくれもなかったわたしが耳打ちをしたあのときに。
東雲さんも、わたしの耳に口を寄せた。
人生の成績表でたとえるとオール5のエリート《アルファ》でも、オール1の落ちこぼれ《オメガ》でもない。
世界の大半を占める、平均値の《ベータ》。
わたしも東雲さんもベータだった。
だから当時も、そっか、で終わった。
それによって何かが変わるとは思っていなかったし、それからすぐに東雲さんとは気まずくなったから、変わってたとしてもわかんなかった。
どちらにせよ、第2の性なんてどうだってよかった。
あの頃は、まだ。



