ハイドアンドシーク



「……頸は?」

「それは、平気です。そこだけは」



襲われた瞬間のことはよく覚えていない。


朦朧とする意識のなか、それでも頸だけは必死に守っていた。

利き手はたぶんそのときにやったんだろう。



授業の予鈴が鳴った。

畜生が、と悪態をつかれる。



「次の教室、こっから遠いじゃねぇかよ」

「すみません」

「お前に言ってない。独り言だ独り言」



もはや癖になっているのか、先生はボサボサの頭を掻きむしった。

相変わらず長い指。

日曜の補習のときと違うのは、その付け根の辺りがあかぎれのように痛々しく荒れていることだった。


「お前も早く教室に戻れ」と言い残し去りかけた先生は、途中でなにかを思い出したように振り返って。





「ああ、そうだ──」