ハイドアンドシーク

§




「こっちでいいんだよな?」

「はい」

「冷やすのは開けてからのがいいんだってよ。……位置、この辺でいい?」

「うん、だいじょうぶ」


東雲さんが距離をつめてくる。

耳朶に対して、針が垂直に刺さるように。

いよいよ、目を閉じる。

膝の上の拳が強く握られて、



「動くなよ」

「……ぁぁあちょっとまって!」

「ばッ、かおまえ」

「やっぱこわい!これ怖いって東雲さん!」


危ないとわかっていながらも、身体を反対にのけぞらせて耳をおさえる。

すると反対側の耳朶をぎゅーって引っぱられた。



「だから言っただろうがこの馬鹿!」

「何回も馬鹿って言わないでよお!」


わたしは馬鹿だ。大馬鹿だ。


予防接種と同じ要領だと思っていた。

まさか患部が見えなくなるだけでこんなにも怖さが倍増するなんて、そんなの知らなかった。