「どうして、これだけこんなに安いんですか?」
他のアクセサリーには倍以上の値段がついているのに、そのピアスだけは異様に価格が低かった。
正直、わたしでも買えちゃうくらいに。
「よく見てごらん。表面にうっすら傷があるでしょう」
渡されたルーペで見てみると、たしかに爪で引っ掻いたような線はあった。
たったこれだけなのに?
こんなの、些細なものだ。
だけど事実、このピアスはずっと売れないのだとおじいさんは物悲しげに言う。
「みんな、美しいものには完璧を求めてしまうらしい」
それが自分のものとなると尚更だ、って。
皺のある目元をふっと緩めて笑った。
「完璧なものなんてこの世にはひとつも存在しないのにね」
お店から出たときにはもう日が暮れかかっていた。
帰路を辿りながらスマホの地図アプリをひらく。
ドラッグストア、どこにあるっけ。



