ハイドアンドシーク



店内は小さな美術館のようだった。

アンティークの木棚に飾られているのはめずらしいアクセサリーばかり。

おそらくどれもが一点もので、値札には0が6個ついている商品もあった。



「ひえ……」


思わず声が出る。

薄々は感じてたけど、ここ冷やかしで入っちゃ駄目なお店だ。


お店のひとがいないうちに、とこっそり退散しようとしたとき、ふっ、と。

ショーケースの隅っこに飾られていたあるものに目を奪われる。

小さな宝石が嵌まったシンプルなピアス。


その宝石は東雲さんの色をしていた。




「それはアレキサンドライトだよ」


突如としてかけられた声。

顔をあげると、そこにはいつの間にか店主らしきおじいさんが立っていた。


食い入るように見つめていたわたしは、恥ずかしく思いながらショーケースから身を離す。



「あ、アレキサンドライト?」

「その宝石の名前さ。ある一定の条件のもとで色が変わるんだ」

「色が……」


もう一回、よく見てみたい。

そんなわたしの思いを察してか、おじいさんが笑いながらピアスをショーケースから出してくれた。