ハイドアンドシーク




翌週、わたしはひとりで街に出ていた。


お目当ては東雲さんへのプレゼント。


事前に訊いても絶対「いらない」って言うだろうから今日のことは内緒だ。

この際だからサプライズにするのもいいかも。



「んーと、東雲さんの好きなものは……」



真っ先に思い浮かぶのは、落語。


そこまで熱心に聴いているわけじゃなくて、ぼうっと別のことを考えていそうな時も多々あった。

たぶん落ち着くんだろうなって見てて思う。 



あとはコーヒーもよく飲んでる。

わたしも影響されて飲むようになったけど、東雲さんのようにノンシュガーではまだ飲めない。



意外と読書家だし、いちど寝たらなかなか起きないし、みんなのことよく見てるし、気が利くし、やっぱり顔も好きだし──




「って、違う違う!」


そういうことじゃないんだってば。


心なしか火照ってきた顔をぱたぱたと仰ぎながら、頭のなかで候補を絞っていく。



よしっ、と歩くわたしの頬を撫でる風は、秋の気配を含んでいた。