わたしはそれを眺めながら、小さい頃おばあちゃんによく読んでもらっていた絵本を思い出していた。
ずっと虐げられてきた女の子。
やさしい魔法使いに、かっこいい王子様。
女の子が落としたガラスの靴が導いたのは、まるで運命のような王子様との再会。
わたしがこの靴を落としたら、東雲さんはわたしを探してくれるのかな。
──れん、みっけ
あの日、あのかくれんぼのときみたいに、わたしがどんな場所にいても見つけてくれるのだろうか。
「ん。どーよ、完璧だろ」
わたしがぼうっと惚けているあいだに、器用な東雲さんはリボンを結び終わっていた。
そこでようやくあることを思い出す。
「そうだお金っ……」
試着したときにちらっと確認したワンピースは思っていた倍もしたし、この靴も決して安くはないはずだ。



