ハイドアンドシーク



着ていたものは袋にお入れしますね、と店員さんが立ち去ったあと、試着室の隣に置かれたソファに腰かけたわたしはパンプスに苦戦していた。


上品なパールホワイトでローヒールのパンプス。

同じ色のサテン布を足首に巻きつけて結ぶアンクルリボンになっているそれは、大人っぽさと少女っぽさのあわさった可憐なデザインだった。


でも……リボンが上手く結べない!

そうだ、わたし、リボンはどうしても縦結びになるんだった。




「髪、戻したのか」


ふっとパンプスに落ちた影。

顔をあげると、東雲さんが戻ってきていた。


その足元にはわたしの元々着ていた服やら靴が入っているであろう紙袋が置かれている。

店員さんの遊び心からか、紙袋を覗くとコーギーがこんにちはするように畳まれていた。



「うん。さすがに胸はこのままだけど」

「そんな変わんねーだろ」

「あーセクハラした!変わるもん!」

「んな事より縦になってんじゃん、それ」



ほんと不器用、と。

ちいさく呟いてからわたしの前に跪いた。


どうやら結び直してくれるらしく、東雲さんの指によって不格好なリボンがしゅるりと解かれる。