さすがに抗議するコーギーの隣は歩きたくないと東雲さんが抗議するので。
中心街まで出てきたわたしたちはアパレルショップが立ち並ぶ通りに来ていた。
東雲さんはあまり物を持たないタイプで、恐ろしいまでに物欲もない。
結果的にわたしの買い物に付き合わせることになるんだけど、それに関して文句はまったく言われなかった。
でも、どのお店に行ってもピンとくるものがなくて。
前みたいに東雲さんに選んでもらおうかな、と考えていたとき、東雲さんがわたしをとある店に連れていった。
「え、ここって……」
「見てたろ、さっき前通ったとき」
つい数十分前。
たしかに東雲さんと話しながら歩いているとき、ちらっとショーウィンドウ越しにそれを見ていた。
だけど、あんなの、たった一瞬だったのに。
それでも目を惹かれたのも、事実だった。
「気になるんなら着てみれば?」
「でもわたし、今は女じゃない……」
すると、東雲さんが呆れたように少しだけ笑った。
あとから思えば、東雲さんが何のてらいもなく笑うのを見たのは、このときが初めてだったかもしれない。
「今もなにも、お前は最初からずっと女だよ」



