倉庫はトタン屋根のプレハブ工法だが、整理すれば四畳半くらいのスペースは確保できる。季節的に寒さに震えることもないし、別館か離れだと思えば、そう悲惨でもない。

「子どもの頃は、秘密基地みたいにして使ってたしね」

「そんなこともあったわね……なにかあったら、すぐにこちらに来ていいからね」

「うん。一応、中からつっかえ棒をして、扉に鍵をかけるね。合図は、いつものO・MU・SU・BIで……」

 と、陽気な仕草で母を安心させながら──実は、内心は穏やかではない。

 公花が自らそれを申し出たことには、ちゃんと理由がある。
 剣の様子が気になって、家族の目を気にしていられる状況ではなかったからだ――。

 おやすみの挨拶を告げた後、キャンプ用のポータブルランプを持って倉庫に入った公花は、作り笑顔を消し、先に運び込んであった籠のそばへと駆け寄った。

 籠の中に安置されている剣は目を閉じて、ぴくりとも動かない。

「剣くん……まだ目を覚ましてない……」

 そっと指で白い体に触れると、その冷たさと皮膚の強ばりように驚く。

(このまま死んでしまったらどうしよう)

 自分たちのために神通力を使ったせいで、彼の疲労が限界を超えてしまったのは明白だった。もしもの未来を考えると心は氷水を浴びたように凍えて、全身が震えてくる。

 白い小さな顔にこちらの頬を近づければ、かすかな吐息を感じる。
 死にはしない、ただ一時的に弱ってしまい回復に努めているだけなのだと――そう信じるしかなかった。