「へぇ~、お守り! ありがとう、大事に使わせてもらうね!」

 満面の笑みで頷いた公花は、いつも首にかけている小袋の中にいれ、持ち歩くことにしたようだ。

 ピンク色の小さな巾着袋は、ご利益のあるお守りだといって、彼女の父がくれたものらしい。大きさとしてもぴったりだが、一緒に入れていいのだろうか……。

「いいのいいの。どうせお父さんがくれるものなんて、大抵パチモンなんだから~」
『そ、そうか?』

 会ったこともない彼女の父に、若干の哀れみを感じつつ……。

 こちらの鱗の力は、紛うことなき本物だ。剣の鱗は、剥がれ落ちたものでも、少なからず霊力を秘めているのだ。

 中でも数年に一度、採取できる「銀鱗」は、秘蔵の妙薬として組織の仕事にも一役買っていた。体に取り込めば一時的な体力増強、超人的な力を得ることができるのだと。

 さらには、そのうち虹色に輝くものは「龍鱗」と呼ばれ、その世代──脱皮して次に再生するまでの一生の間にひとつ取れるかどうかという、大きな力を宿した希少な一枚。
 常人には使いこなせない霊力を蓄積しているといわれているのだ。

「握ってると、不思議と温かいね? 秋口にはよさそう」

(……)

 貴重な一枚が、たとえカイロ扱いされたとしても……。

 いつか、彼女の身を守る術になってくれるはずだ。
 なにせ、本物の蛇神が生み出したお守りなのだから──。