声が小さくなり、聞こえなくなった。
 おやと思っているうちに、布団の中に閉じ込めている存在も、動かなくなっている。

「え?」
 違和感を覚えて、ちょっとだけ動きを止めて考えた。それから、布団にかける体重を軽くしてみる。

 すごくすごーく弱った剣の声が、布団の中から聞こえてきた。

『……助けてくれ……俺がその、蛇……』
「え????」

 おそるおそる布団をめくると、伸びきった白蛇が、目を回していた。

       *

 おちょこでお水をあげて、うちわであおいであげると、蛇もひと息ついたようで。
 ぷはっと妙に人間くさく、大きな息継ぎをひとつ。

 先ほどは相当に苦しかったようだ。ぜはぜはと蛇らしからぬ動きで、しつこく酸素を貪っている。

(蛇が、剣くんの声で喋ってる……?)

『し、死ぬかと思った……』
 口の動きに合わせて聞こえてくる声は、確かに知り合いのそれで――。

「つ、剣くん……なの?」
 まさかと思いながら名を呼ぶと、白蛇は恨めしそうな目を向けて、こくりと頷いた。

 用意した座布団の上にとぐろを巻いた姿は、まるで幸運の置物のようだ。
 だが尻尾はうねうね、ぱたぱたと不機嫌に布を叩いて、ナマモノっぽさを主張している。
 酷い目に遭ったと怒っているようだ。

「蛇の姿になったまま……人間の姿に戻れなくなった!?」

『そうだ』

 公花を怖がらせないよう、説明を尽くそうとしている彼は、まずは要約した形で「力を使いすぎたんだ」と告げた。