こんなぬいぐるみ、部屋にあったっけ。
 ひょっとして、お母さんのいたずら?

 微動だにせずじっと見つめていると、白蛇がちろりと舌を出した。

 生きている!?

「ひぃやーーーーーーーーー……!!」

 家を震わす、大絶叫が響いた。

「キャーキャーキャーキャー!」

 狂ったように叫びながら、布団をおっ被せて捕獲する。
 夏布団なので厚みがなく、細長いソレが布地の下にいるのがわかる。じたばた暴れている様子が伝わってくるのが、なんともおぞましい。

「蛇、蛇、蛇ぃ~~~~っ」

 一体どうして。窓から入ってきたのだろうか。

『……花。公花! 落ち着けっ』
「……え?」

 どこからか、聞き覚えのある声がした。
 動きを止めて、きょろきょろと視線を走らせる。

「その声は……剣くん?」
『そう、俺だ。ちょっと力を緩め……』

「どこにいるの? 今、手が離せなくて……っていうか手伝って! 大ピンチなのっ」

 なんで自室にいながら、姿の見えない剣の声が聞こえるのか。
 よくわからないが助けを求めて叫ぶ。

『いやだから、布団の……』

「そう、布団の中がまずいの! 一大事なの~っ」

『く、苦しい、空気が……殺、す、気か……』