そして、少しいたずらっぽい光をいつものクールな瞳に浮かべて、

「一緒にサボっていくか?」

 なんて言うもんだから、

 ──ドッ!!! ……と、公花の心臓がまた異常な音を立てる。

「いいい、いえ、私は治ったので、そろそろ戻らないとなので! 手当て、どうもありがとう、本当にもう大丈夫!」

「おい、治ってないだろう、走るな、おい!」

 恥ずかしさが爆発し、痛みも忘れて保健室を飛び出していた。勢いは止まらず、そのまま教室へと猛ダッシュする。

 足が、じんじんと疼いている。
 クラスに戻ると皆が心配してくれたけれど、剣と保健室で会ったことは内緒にしておいた。

 学年一の貴公子に怪我の手当てまでしてもらった、なんてことが知られたら……大ブーイングが起こることは、うっかり者の公花でもさすがにわかる。

(なんだろう、心臓がおかしいよ……熱も、出てきたかも? 変なとこ打ったんだ、きっと……)

 ドキドキと高鳴る鼓動はなかなか収まらなくて、次の時間の授業内容は、まるで頭に入らなかった。