俺たちが夏芽の部屋から戻ると直生は話しもせずに自分の部屋に入りドアを閉めようとした。

「なあ、直生待てよ。お前の悩みってなんだよ、はっきり言えよ」

俺の真剣な顔を見た直生は降参したかのように話し始めた。

「分かったよ。僕もちゃんと話すから、遥生も本当のことを言って欲しい」

「何をだよ、俺はなにも隠し事なんてしてないだろ」

俺は煮え切らない直生の態度にイライラしていた。

「夏芽のことだよ」

直生から出てきたのは夏芽について。

なんとなく分かっていたから別に驚きもしない。

直生は少し間をおいて、話を続けた。

「遥生はさ、夏芽のことどう思ってる?」

聞かれるだろうなとは思っていたけど、俺の本当の気持ちを先に言ってしまったら直生はきっと自分の気持ちを押し殺す。

「俺のことはどうだっていいんだよ。今は直生のことだろ。直生の気持ちはどうなんだよ」

直生は俺の気持ちを聞いて「応援するよ」とか言うんだろ。

昔っからそうだった。

俺に遠慮していつも直生は自分の感情を仕舞っているんだ。


あの出来事を除いては。