俺の部屋の手前にある直生の部屋。

換気のために窓とドアが開いている。

何気なく直生の部屋を覗くと、いつも通り学習机の上に新品のランドセルが置いてあった。

俺はふと、もし直生が生きていたらどんな生活だったんだろうな、と考えた。

もしかしたら夏芽の隣には俺じゃなくて直生がいたかも知れないな。

俺は知っていたんだ。

幼い頃、3人で遊んでいた時に夏芽は直生の後ろにずっといたことを。

夏芽が頼っていたのは俺じゃなくて直生だったことを。


その直生が小学校に上がる前に事故で亡くなった。

それでも何故か俺と夏芽はいつも直生がそばにいて見守っていてくれてるのを感じていたんだ。

よく夏芽が、

『直生はね、いつもここにいるよ。私ね、直生にたくさん助けてもらってると思う』

そんな風に言ってくれるんだ。


部屋に入りお互いの撮った写真を見ながらカナダでの思い出を話していた時、その中の1枚に俺と夏芽は息をのんだ。


出発の空港で撮った1枚の写真。


今の俺にそっくりな、左目の下にほくろがあるその横顔。





『直生はいつも側にいてくれたね』




***** 完 *****