一章


夜空にただ一つ輝いていた星が、落ちた夜。
世界には重い暗幕が降りた。それは降りてしまったら、上がらない。闇だけがあたりを埋め尽くす。
ただ、なにもかもが視界からなくなったわけではない。
それまでは見えていなかったが、暗闇の中にも濃淡はあって、ベッティーナはそこで初めてその存在を認識した。
それは本来、見えてはいけないなにか。誰もが目を逸らすなにか。
しかしベッティーナの閉じた世界には、もうそれらしかいなかった。そして彼女自身、向き合わなくてはならない理由もあった。
そうして過ごして十年あまり――。
ベッティーナは否が応でも知ることとなる。
彼女はそのなにか、この世ならざるものに、昔からたいそう愛されていたのだと。