老人保健施設で働き始めた頃だった。
当時はデーサービスなんて珍しいくらいで、毎日が挑戦の日々だった。
施設は動き始めたばかりで、利用者をいかに増やすかが最大の課題だった。
 ぼくもマッサージ師として採用はされたが、毎日仕事に追われて手探りの状態だった。
 仕事が増えてきて精神的にも疲れてきたころ、奇妙な夢を見た。
 ロケットで果てしなく真っ青な宇宙に打ち上げられてしまったんだ。
でもぼくはロケットから飛び出して歩き始めた。 足元にはネギのように細い綱が一本。
雲でさえ微塵に見えるほどの高い所を平気で歩いている。
落ちるとも思わないし、怖いとも思わなかった。
綱は縛られているわけでも繋がれているわけでもなく、ただただ浮かんでいる。
そこを永遠に歩き続けている。 端が見えない。
何処までもいつまでも終わらない永遠の綱渡りをしているんだ。

    解釈
 なぜこんな夢を見たのか、ぼくにも分かりません。
ただ、始まったばかりのデーサービスで暗中模索を続けていたのは確かなこと。
先輩と呼べる人も居ないし、扱う患者さんも初めての人ばかり。
資格を持っているとはいえ、毎日増えていく患者さんを捌くのは大変。 試行錯誤と手探りの連続です。
 自分一人で最初から最後まで全責任を負うとんでもない緊張感の中での夢だったことも確かな話。
 果てしない高い空にネギのような細い綱が一本だけ、、、。 考えればぞっっとします。
でも精神的な心許ない気持ちを表していたのかもしれませんね。