すくりと立ち上がり,伸びをする。
じゃあねと声をかけると,湊くんは眉をハの字にして困ったように手を振った。
なんで,なんで僕でいい,になるんだろう。
湊くんは私の大事な知り合いで,大好きな湊ままの大事な一人息子で。
それをわざわざ壊すリスクを背負ってまで,湊くんと恋愛したいとは思わない。
一生恋愛できないとしても,湊くん一家との関係を選ぶ。
恋愛は生きる上でのリスクだから。
だから身近な人に程当てはめてはいけない。
真面目に恋愛しなくてはいけなくなるから。
その恋に,本気になるから。
「適当言ってると,湊ままが泣くよ」
可愛い恋人を楽しみにして,あんなに私をちらちら見ながらはしゃぐのに。
のんびりと廊下を歩いて,私は今から食べるお弁当の中身を思い出していた。



