君と夢に跳ぶ恋

「私も付き合ってるのに、家が厳しいからっていう理由でいつもデートの誘いを断ってたし、あんまり彼女らしいことできなかったなって。彼とは塾が一緒なんですけど、私は毎回塾でお話するだけでも幸せだったんです。でも彼には我慢させちゃってて。たぶん彼の優しさに甘えちゃってたんだと思います。」

心の奥底で、春樹くんなら許してくれるって思ってしまっていた。

「でも、彼は幼馴染の人に告白されて、彼も昔その人のことが好きで、私とも最近会えてなかったからって、また好きになっちゃったみたいで。相手の人すごく美人だし、正直勝てないって思いました。」

気づけばまた泣いてしまっていた。

「あれ・・・?ごめんなさい・・・。」

慌てて涙を拭う。

「泣いてもいいよ。おねーさんこれ以外にもいろんな悩み溜め込んでるみたいだし。せっかくだから吐き出していったら?」

「いくらでも聞くよ。」

そう言って笑う男の人。

「私・・・。夢があるんです。」

何でだろう。この人になら話せる気がする。

私とは真逆なこの人になら。

「小学校3年生の頃、おばあちゃんに一度だけ連れて行ってもらった美術館で見た絵が、すごく大きくて、いろんな色が混ざり合っててすごく綺麗で、何ていうか、心を奪われたんです。その時に、画家になりたいって思ったんです。私もこんな絵が描けるようになりたいって。」

初めて言えた。私の夢。

「画家かぁ、いいじゃん。おねーさんにぴったりだ。いいなぁ、夢があるって。俺はまだないから。」

「でも、この夢は誰にも言ってはいけないんです。」

「何で?」

「だって許される訳がないから。お父さんもお母さんも私が2人が決めた人生を歩むことを望んでる。きっと画家になりたいなんて言っても許してくれない。言える訳がないんです。絵を描くことも禁止されてるし・・・。」

「何ていうか、おねーさんのご両親はおねーさんに凄く厳しいの?」

「まぁ、そうですね・・・。でも私がやりたいことはそんなことじゃないんです。中学も、お父さんが決めたところを受けたんですけど、落ちちゃって。」