「ああああ? な、なんだ?」

 彼はわたしたちに気がつき、ノロノロと上半身を起こした。彼の愛する人も同様である。

「喉が乾いた。葡萄酒を持ってこい」

 命じられたけれど、それに従って葡萄酒を持ってくる義理も義務もわたしにはない。

「おいおい、きこえなかったのか? ご主人様が命じているんだ。さっさと持ってこい」

 それでも反応しない。