バートと彼の愛する人は、クレイグ様のことを知っていて当然である。国王同様その威光を知らない人は、この王国にはいないのだから。それこそ、よちよち歩きの子どもからお年寄りまでだれもがその名を知っている。顔だって知らない人の方が少ないかもしれない。なぜなら、彼は国王に代わってこの王国内のいたるところに視察に訪れているから。王都にだって公私ともによく訪れているので、王都にいる者だったらぜったいに知っているはずなのである。

 だから、バートと彼の愛する人はさすがに知っているようだ。

 二人は、かすかに頷いた。