「ちょっと、向こうを見なさいよ。兵隊みたいなのがいるわ。わたしたちを捕まえに来たんじゃない?」

 窓の向こうに、馬車道を屋敷へと向かっている一行が見えてきた。バートの愛する人がそれに気がつき、ガラス扉を指さした。

「こんなこと、こんなこと、あってたまるか。罠だ。おれは、こいつらにハメられたんだ。くそっ! このまま終わるものかっ」

 人間、追いつめられるとどんなことをしでかすかわからない。どんな力を発揮するかわからない。

 このときのバートは、まさしくそれだった。

 彼は被害妄想気味なことを怒鳴ったかと思うと、わたしに飛びかかってきた。