これまで公爵子息としての立場の上に胡坐をかき、横暴のかぎりを尽くしてきた。それが、一瞬にして消え去ったのである。

 彼に残っているのは、愚かさだけ。

 おそらくは、後悔や反省の念は抱かないだろうから。

 そのとき、居間のガラス扉の向こう、つまり外から喧騒がきこえてきた。

(到着されたのね)

 その喧騒が意味することは明白である。