夏がずっと嫌いだった。



だけど、君と過ごした一ヶ月の夏から、夏がそこまで嫌いじゃなくなった。


夏は大好きな君との思い出がたくさん詰まっている大切な季節だから。夏が来ることがいつしか待ち遠しくなっていた。




「あ、青羽(あおば)先生。こんなとこにいたんですか」




屋上のフェンスに寄りかかり飛行機雲を眺めていると、数学教師の私より一つ年下の間中(まなか)先生がやってきた。



真中先生は、自分で言うのもなんだが、私に好意を寄せてくれていると思う。


告白はされていないが、休日遊びに誘われたり、勤務後に食事に誘われることが多々あり、なんとなくそうなのかなと思っているだけだけど。




「夏の屋上とか、暑くないですか?」


「たしかに、暑いですね」




昴がいなくなってから、十六年が経った。


高校を卒業して私は教育学部のある大学に進み、東京の高校で四年くらい教師として勤めていたが、七年前におばあちゃんが亡くなってからはおばあちゃんちに住むことにして、この町で高校教師をやっている。


この町にいずれかは住もうと思っていたから、色々と便利な東京に未練はなかった。




「青羽先生、知ってますか?今日、流星群が何年かぶりに多く降る日なんですよ」


「ああ、そういえばニュースで言ってましたね」