完璧なのは振る舞いや性格だけではない。
 外見も世に言うところのイケメンで、キリリとした男らしさとやわらかい表情が絶妙に調和しているし、動きが付けられている黒髪はオシャレな雰囲気を醸しだしている。
 身長は百八十センチほどで手足が長くスタイルもいいので、私にはキラキラとしたオーラすらまとっているように見える。
 今も(まく)ったシャツから覗く腕が筋肉質でカッコいいなと見惚れそうになった。

「夏にぴったりのおやつだわ。こんなのもらっちゃって悪いわね」

「先輩たちにはいつもお世話になってますから。ちょっとした差し入れなんで気にしないでください」

 彼の穏やかな低い声は耳馴染みが良く、明るく魅力的な笑顔は周囲の人々を和ませる。
 その証拠に、会話を交わしている浦田さんは目をとろんとさせていて、まるで恋でもしているみたいだ。
 
 彼を好きで交際を望む女性は、大げさではなくこの会社にたくさんいると思う。
 というのも、相楽くんには特定の恋人がいないという情報が出回っているから、なおさら争奪戦状態になっている。
 たしかに彼のように品行方正な王子様タイプのイケメンは、女性から人気が集中するのもうなずける。

 例に漏れず、私も相楽くんに胸をときめかせている女性のうちのひとりだ。
 同期だから互いに敬語を使わずに気さくに話していたら、気づいたときにはもう恋心が芽生えいた。今では彼の破壊力のある笑顔を見るたびにドキドキとして顔が熱くなる。

「相楽くん、ありがとね」

「うん。伊月、またな」

 ひらひらと手を振りながら立ち去る姿まで爽やかだなと見惚れつつ、彼の背中を見送った。